ドロミティ心髄旅行記−3


9/24


 今日も快晴。さっそく前庭に出る。東側の谷に美しい雲海が発生している。
 手前には小さな池があり、雲海と合わせて構図すると、面白いので何枚も撮る。
 日が昇ってからは南面に三脚を移動、3峰を構図するも、実に撮りづらい塊だ。
 3峰全部を入れないとウソのようだし、全部入れると広角過ぎてインパクトに欠ける。
 朝飯を食べてから、僕は裏の山に登る事にした。
 30分ほどで登頂。360度の展望を楽しむ。
 小屋に帰り、部屋でアサヒカメラを読んでいると
 「テラスでビールどう?」ということで、昼前から飲む。
 そのまま昼飯に突入し、地元のベーコンを使ったベーコン目玉焼きを頼む。
 ウマくてバカ喰い。
 午後は自然にベッドにて瞑想、僕はなんと5時まで寝ていた。
 9月の仕事疲れが出たのかもしれない。
 夕方また起き出して撮影し、6時半からまたまた食事だ。
 8時過ぎにはまたまたまたベッドで、それでも11時頃まで読書してから眠りについた。


9/25


 今朝は雲海が出ていないが、独特の空気感が漂っていて、かなりの枚数を撮影する。
 露出が非常に難しい。デジカメでは光の許容範囲が狭いので苦労する。

 西側の谷には雲が湧いていて、背景の赤い山と対照的な美しさ。
 これも露出で苦労する。

 小屋の壁面に埋め込まれたマリア像と朝焼けの山を一緒に撮れるポイントを発見。
 これはなかなか面白い構図だ。

朝飯の後、9時に出発、アウロンツォ小屋まで裏の路から行く。
 壮大な3峰を仰ぎながら、その足元を横断して右に巻いて行くパノラマ街道だ。

 でも、1時間以上も歩いているのに、まだその3峰からは解放されないのだ。

 何度も仰ぎ見るたびに、ため息とも驚嘆とも、むしろ諦めに近い唸り声とも言える、完敗のつぶやきが出た。
 それほど大きく、高く、固く、それはほとんど空の半分を占めていた。

 ようやく牧場の小屋にて一休み。
 日本のTV番組で、物書き娘がコーヒーを飲んだ場所でスケッチ休憩。

 残る後半分の路をまた歩き始める。
 アウロンツォ小屋に近づくにつれて、携帯電話の電波が届く領域に戻り、携帯が10回以上、伝言を受け取って行く。
 そんな音がリュックで限りなく続くのを聞きながら、何だか現実社会に戻るのがイヤで、そのまま出ないでいた。

 聖人は山に住む、海ではない・・・とはだれの言葉だったか。(僕だよ)

 海は「竜宮城」に代表される快楽、享楽の世界だ。
 山は孤高な、孤独な、困難な世界の象徴として存在して来た。
 世界には、未だ宗教的理由から、聖なる頂として未踏峰がある。

 今回、我々が巡ったトレチーメの谷は、それは静かで荘厳な空間だった。

 コルティーナの宿に到着。
昼寝した僕。
 そして夕食は、クルマで20分離れた部落の店「オスピターレ」に出かけ、その繊細な味に驚嘆したのだった。


9/24
1=東の谷の雲海。手前の池と対比が面白い。
2=トレチーメ群。テラスから静かなパノラマを見る。
3=小屋裏の山。頂上まで登った。
4=食堂の窓のお飾り。こういう無駄な事にもシャレを感じる。
9/25
5=本日は雲海無し。でも空気が面白い色で、かなり撮る。
水面に赤い飛行機雲が映る。
6=西の山、朝焼け。ブルーがきれいで飽きない。
7=マリア像と朝焼けの峰。絵はがき的構図だが、面白い。
8=3峰下を右に巻いて行く至福なひととき。
広大な谷に人影がほとんどなく、すれ違ったのは10組ほど。