今回は少し変わった観点からイタリアを解析してみましょう。
(ちょっと飲みながら話しますので、そちらも白ワイン、赤ワイン、
グラッパを用意してください)

日本料理は目で6割食べる、とか言われるほどに、その見せ方に
重きが置かれています。

一方イタリア料理は、素材が素晴らしいだけに、料理の盛りつけ方は
よ く言えば素朴、どちらかというと素っ気なくゴテゴテ盛りという
感じですが・・・そこがまた可愛らしくて好きになる頃には、
貴殿のイタリア狂いはかなり進行していますのでご用心。

こうして夕暮れる頃、素材のパワーに対抗すべく、
喉元にワインを進軍させるひとときは、何事にも代え難いものです。
(そこで激しく相づちを打っているのは、元締めのお恭センセかな?)

ところで、イタリア風飾り付けの基本には、イタリア人の歴史的美意識
が確固とした土台を持っています。
これから独断的にその解説をしてみますので、ひととき、食卓の向こう
にお座りください。
(料理の撮影にはフラッシュを使わず、また手持ちなので、
画質はいまいちですがご容赦ください)


1=トスカーナ、ピエンツァの職人的ハム盛り合わせとペコリーノチーズ。

限りなく自然な素材と塩、そして風が作り出す絶品群。
  前菜なので、プロセッコで軽く始めましょう。
2=山の街ペルージャの手づくり貯蔵肉盛り合わせ。

聖なる豚様・・・と崇められている。捨てるところが無い。
右端は頭の部分の乱切りを固めたもの。耳も鼻も軟骨も混ざっている。
脂身さえウマい。これに赤のメルローで幸せです。

3=こうした肉の芸術品は、その鮮やかな赤さ、白い脂身、胡椒の黒い
粒などの組み合わせが食欲を誘うが、実はその基本的色は、歴史あるペ
ルージャ大学の内装や、
4=ゴシック様式の教会内陣のマリア聖祠のイコンなどと共通している。
(アッシジの聖天使教会内の聖キアラ礼拝堂)
5=「これが飾り付けと呼べるのか?」と意見が分かれるが、オリーブ
の黒、アチューゲの茶に、食べないパセリの緑を付けるセンス。
(アドリア海に面した安い店)
6=レバーをぶどうの葉っぱに包んで赤ワインで煮たもの。この店は素
朴な飾り付けで、まるで家庭で食べる感覚。

何か、緑か赤を付けてほしいが。ま、ウマければいいか。
(ピエンツァの有名な4店のうちの一軒)
7=これを見てヨダレを出す貴方はかなりトスカーナ病が重いですな。
  パンの上にイタリア国旗を再現させるのはシャレか?
  どっちにしてもオイルがウマくないと完成しない前菜です。
  よく冷えた発砲白ワインで、チーンとグラスを鳴らしながら目を見交わす。
  「今夜は決めてやる夕食」のはじまり、はじまり・・・。
8=赤、茶、黒、白、ちょっと緑・・・何の事はない、ピエンツァの歴
史的壁面を皿の上に再現しただけじゃないの?
9=ミシュランガイド1星の魚料理店にて。

手長エビの生に磯の色をイメージさせる野菜付き。
それをうず潮の様な透明な皿で出す。
海の生き物の活発さを感じる色使い。
(アドリア海フェッラーラ郊外)
10=伊勢エビ、クルマエビ、ムール貝、イカ、それらに家庭菜園の野菜が絡んでいく。
   ゆで卵の黄身と白身のはんなりとした甘さが海モノと野菜をうまく調和させている。
   グリーンソースのパセリは手切りか、その粗さによってパセリの香りが立ち上ってくる。
   色の配置も絶妙。オリーブは後から置いたに違いない。
11=ボローニャ丘陵の村A店の自家菜園の野菜群。

口に入れたときに土地のパワーを感じるシアワセ。
   飾り付けは慎ましやかで可愛いが・・・・
12=こうした色彩感覚は、小さなペンションの、階段踊り場にある小さな飾り付けと共通している。
   基本は、「見ると安らいで、元気が出る」という考え。
   入れ物に出来合いのものを使わない頑固一徹さ。
   ドライフラワーながら、「生きているもの」を感じさせる事で、
それを見る「アナタ自身も生きているんだよ」と気づかせてくれる。
   人生を楽しまなくっちゃ!というラテン気質が根底にある。
13=山のダイヤ、白トリュフの3題料理。

100g5万円のそ れを惜しげも無く載せて出てくる。
   ナイフを入れる前に荘厳な気持ちになる。
トリュフ自体は食べて も特においしいという訳ではない。
   そのものから立ち上る香りに大金を払うのだ。
時間が立つと消え ていくその香りは思い出に似ている。
   ああ、人生ははかない・・・切ないほどに感性が震える今夜だ。
   飾り付けはクラシックな雰囲気。
以下の2品は、ボローニャ丘陵の村A店。
   イタリアでベスト12のスローフードの1店。
14=手前はアペニン山脈の清流のマスを軽く薫製にし、セロリの酢付け、ピーマン等と重ねたもの。
   奥は一見リゾットのようだが、地元の絶品ポテトをコマ切れにして軽く火を通し、
パルミジャーノ、白トリュフで味付けした一品。
   シャキシャキした歯ごたえに畑の恵みを実感する。
   飾り付けは至ってシンプル。素材の実力で勝負だからか・・・。

(ぼちぼち赤ワインにするタイミングですな、トリュフには、白 では持ちこたえられない)
15=心和む宵、思い出に残る夕食は、貴方の反対側、
誰がその白い小さな大陸の向こうに居るかで決まる。
(これは僕の持論デス)
   そしてまた、店の空間がいかに安らげるかというのもポイント。
   この写真はボローニャ丘陵の村A店では無いが、
素敵な一角を持ったウンブリア州某店のグラッパコーナー。
   意気込まない、さりげなく、しかしセンスあるインテリアというのは結構難しい。
   影と陰が大事な役割をしている。
16=魚料理の後は、ジンジャーの辛さが効いたシャーベット。
   見た目にも爽やかな一品。
ミントの緑に合わせた、下の葉っぱがニクい演出。
17=トスカーナの鄙びた村の手芸屋の中を覗いた写真。

昼休みで誰も居なかったが、思わず入ってみたくなる爽やかさ。
   青系色の使い方が見事!
18=某店の一角。あそこにああいう青いビンを置くセンス。
   試しに、親指で青いビンを隠してみると、このカウンターの主役がこの青さなのだと判ります。

なーに、中身のグラッパがウマければ、それこそが主役だ!
というのは確かに一理ありますがね。

そんなわけで、ワイン片手にグラッパまで通過しながら、勝手な解釈を
聞いてもらいました。
好きな人と、楽しい夕食をお楽しみください。
くれぐれも飲み過ぎないように、ね。