ずっとミラノです。
ボローニャに帰ってもまた仕事なので、今月の「デジタル」写真は
お休みします。
代わりに、ちょっと不思議な空間の作品を見てください。


今から900年以上前(平安時代の末期)、に創立された
西洋世界最古にして唯一のボローニャ大学が西洋文化の中心地だったころ、
この街にはヨーロッパ各国からの学術関係者が集結した。
スペインからの学者と留学生を寄宿させる目的で、
ボローニャの石造りの街の一角に「治外法権地区」の権限を持つ
この「コッレージョ・ディ・スパーニャ」ができたのは1300年代である。
回りを高い壁で囲まれたこの一角は地元民からは「イーゾラ(島)」と呼ばれていて、
スペイン領であるそこには入れないのだ。
その内部には寄宿舎はもちろん、教会、食堂、図書館、中庭、回廊があり、
天井画、壁画、絵画、彫刻、祭壇等が保存されている。
この寄宿舎の記録書が出版される際に、建物の撮影と解説用のイラストの依頼が私にあり、
半年かけて撮影した、そのボローニャの人でも滅多に入れないスペインの空間をお届けします。


1=外の通りから見る。
壁は高く厚く、様々な外敵を拒んで来た。
壁面に残る漆喰の絵。
2=南側の壁に残る通用門としての、かつての窓。
3=北側の通り。歴史を感じさせる門のフレーム。
4=外壁北西の角。
5=エントランス。
小さな中庭が展開する。ここはまだイタリア領。
6=国境に当たる門扉。
作品としては1800年代であろう、  「新しい門扉」と呼ばれている。
7=スペイン領に入り、イタリア領を振り返る。
8=2階回廊への昇り口。微妙な色が美しい。
9=一階からの回廊全景。
陽射しがスペイン的になるのは気のせい だろうか。
10=回廊部の空間。限りなく静かなり。
11=裏庭への通路。中世の空気を保存したままか。
12=歴史的井戸の装飾。文化財指定。
13=回廊部のガラス。
ステンドグラスのように繋いである。気の遠くなる作業の結晶。
14=この窓に惚れて、かなり撮ったのだが、
歴史的な価値として はせいぜい150年程度で意味が無く、
沢山の写真がボツになった。
15=小さなチャペル。「祈る」という名の文化。
16=仰ぎ見る空を再現する。
17=装飾道の集大成。
18=母屋の下を通って裏庭へ。沢山の青春が通った道。
19=藤の咲く頃、失恋した?それとも得恋した?
20=フォークとナイフの音、ざわめき、そういった日々を支えて来た大テーブル。
21=寄宿者達はここで夕餉を囲んだ。静謐なひととき。
22=世界に3ヶしか残っていない14世紀の水差し。
23=食後の語らい、エスプレッソ、トランプ、シガロ・・・。
24=そして、オルガンの響き。
25=2階廻廊の一角。
26=光が差し込むが、あくまでも静か。
27=図書室の控室。
28=何千冊の手稿が眠る。
29=中世の階段。
30=「学ぶ」という修行。
31=絢爛たるタイル。500年は経っている。
32=集会室の壁画と楽譜。
33=世界の中心がヨーロッパだった頃の空気が残る。
34=「平和をあなたに」という教えを示す彩色テラコッタ像。