マントヴァ、シルミオーネ小旅行。
夏休みに入る前、最後の仕事としてマントヴァ、シルミオーネのミニツ アーに出かける。
このあたりにはヴェローナを筆頭にマントヴァ、クレモナ、ブレッ シャ、ベルガモ、
パルマ、レッジョ、フェッラーラという宝石のように 美しい小都市が点在していて、
主にエステ家やナポレオン3世絡 みのいわゆる「宮廷文化」というモノを辿る文化ツアーができる。

今回は一泊だけの時間なので、マントヴァの壁画群とマントヴァ料理、
そして翌日はシルミオーネ散歩というプランを組んで40度近い暑 さの中、
誰も居ない田舎の道をジャズをかけながら、時間に追われる事 のない旅を続けた。

残念な事に、お客さんとオトコ二人だけの「一見、アブナい」二人連れ 飽食ツアーであった。


1=マントヴァの広場にて座るアジア人(これはお客さんではありません、念のため)。
今はバカンスの時期でイタリア人が街に居ない。
ほとんどが観光客か、バカンスに出られない異国人のみ。

観光施設の中には イタリア人のオバちゃん達が居るが、固まっておシャベリしている。
そ ういうのを聴くのが実に楽しい。
バカンス前後なので考えるのはそのこ とばかり、アタマは半分機能していない。
僕は「アタマを振ると、サラサラと(砂浜の)砂の音がする状態」と呼んでいる。
2=宮殿の中は撮影禁止。
でも監視カメラもところどころなので、撮る 気ならば問題ない。
これはドア廻りの額縁を隠し撮りしたモノ。

空調完備、一人5分以内鑑賞時間のマンテーニャの壁画は、やはり凄い。
ただ、人物が少し硬いかな。
3=階段の石の色が全部違う。
ミラノのドゥオーモでも同じ風景を撮っ た記憶が蘇る。
石的にはヴェローナの赤と呼ばれる美しい石がこのあたりに普及している。
トスカーナやリグーリアでは大理石の白さが印象に残ったが、各地方そ れぞれの地元素材を使っているのは料理やワインと同じ。

「こういう面 を見るのが、実に大事で、パック旅行では無理なんですよと、
まあ、こ ちらから言いたい事をお客さんが気づいてくれるのはうれしい。
「発見のない旅は、ニンゲンの輸送でしかない」のですよ。
4=怖いくらいひっそりとした昼食時間の広場。
まあ、殺人光線でクソ 暑い昼間に外で食べる事はないわな、今は昼寝して夕食に復活でしょ う、正解です。
5=ボローニャやサンジミもそうだが、階段を含んだ空間の処理が実に 美しい。
歴史のある空間という感じがする。
6=繊細にして華麗な手すりの細工。
たぶん18世紀くらいかな。

誰か判りますか? 鍛冶屋のレベルもイタリアは高い。
ボローニャで「エリザベス女王の鍛冶屋」や「法王の靴屋」を取材したワタシが保証します。
7=オバちゃん、帽子もなくて死んじゃうよ!。
イタリア人はまず、帽 子というモノを被りません。
だから観光地で帽子の一団が居たら、すぐに東洋の方たちだと判る。
それにしても、石畳の道を、変速機も無い、おばあちゃんの代からの自転車で、良く頑張りますねー。
8=売れる絵はがきの流行りが良く判る。
もうちょっと変わったのは無 いのか心配になるくらいのワンパターン。
9=今回のメインエベント、イタリアの地方料理店ベスト15のう ちの一軒に向かう。
マントヴァ郊外の小さな村、その外にクルマを停め て歩いて村に入って行く。
この村の美しさにはココロ打たれた。

ゴミも 落書きも無い、あちこちに緑、静かなる夕暮れ。
「こういうところに憧れの人をお連れすれば、一発でオチるな!」なんて事はワタシは考えませんですが。
10=素敵なテントの下、席に着く。食前酒が出て来る前から酔って来 る感じ!
「こ、これは、憧れの人を・・・」などとはこれっぽっちも考えませんが、
まあ、難問は、そのお方をここまでいかに連れて来るかだからね、 先は長い。

店主のダニエラさんに「日本人向け特別ツアーのコーディネーター」で す、
と自分の身分を明かし「イタリアベスト15軒を巡っているイタリア大好きな、変なボローニャ人、おーっと、兼日本人です。
今のところ 10軒制覇しました」と説明。

これで一挙にお友達扱いされて、出て来 た難題が「シシリアでは一軒しかない、行った?あそこ?」であった。
イタリア縦断ウルトラクイズで、もし答えられなかったら罰ゲームとし てミンチョ河をイカダで下るのかな,という難問であったが、
「Nでしょう?宿から140kmだったけれど、大雨の中を、そ のためだけに往復して食べに行きました」と即答で難なくクリア!。

「さすがだわね!もう今日はマントヴァのおばさんの家に食べに来たと 思って、私がいろいろ出すから心配しないで」という待遇になりました。
・・・もうお任せだから腹が出ようが、痛風が起きようが、カードが破 産しようが、喉からドルチェが飛び出そうが
「出る、撮る、食べる」の 三拍子で行くしかないぜ!と覚悟を決め、腹をくくる振りをしながらベ ルトを緩める。
11=無粋なるオトコ二人連れに料理が出て来る、出て来る!
菜園の宝、ミンチョ河の恵みもの、豚加工のバラエティ各種。

「もう、ワタシ、今日は酔いますわよ、あとは知らないから・・・」と いう気持ち悪い考えが浮かびそうになるが、
オトコ二人はひたすらプロ セッコを飲んで行く。
12=「単なる野菜盛り合せだろー、これは?」
そう言われるアナタ、 次回はぜひご一緒に!

松の実、干しぶどう、バルサミコ酢和えの河スズキサラダです。
百聞は 一食にしかず、ですぞ。
13=ここで先発のプロセッコからランブルスコにチェンジ。
これが、 まあー、たまげるくらいウマかった。
「唯一の冷やす赤ワイン、発泡も のです」と説明したが「日本では赤ワインもキンキンですが」と言われ て勉強になる。

モデナのランブルスコと比べて何と言うか素朴なパワーがある。
ブドウ の発泡ジュースそのもの、という感じ。
これでマントヴァ料理の肉組強 力打線に立ち向かって行くのだ。
14=来ました,カボチャのパスタ。
甘さが何とも言えない。こういう 組合わせを判ってくれるお客さんなので一緒に食べていても楽しい。
ハ イレベルツアーは客のレベルも大事?
この甘さに赤ワインが、まあ、感心するくらいピッタリ。
15=リゾットではあるが、中身は豚細切れ、ソーセージ、脂身
「も う、とにかく豚のいろいろなものよ」とオーナーが言うので「聖なる豚 様リゾット、ですね」と言うと
「そう、まさにその通りの名前だわね」 と盛り上がる。

何か、きりなく食べられる美味しさで、そこをまた赤ワ インで喉を洗って行く。
16=「まあ、今夜はメインまでは無理でしょうから無理せずに次回 ね」というダニエラ様のお言葉ではあったが、
我々二人は難問の皿を 次々にクリア!
メインの河スズキまで行き着いたのでした!
17=やはりドルチェで「喉にフタをする必要」があるだろう、と出て来たのはミルフィーユ。
これのザバイオーネクリームが絶品で、もう、 フタでも何でもしてくれーというウマさ。

本日の試合は完璧であった。
18=厨房にご挨拶。
次回のツアーで厨房に入れてもらうための表敬訪 問をしておくのは、添乗員の鑑ですな。

アジア人の見習いコックさん達 が帰国後に世界に広めて行くマントヴァ料理。
文化は流れ、広まって、交わって、またそこから新しいものが生まれて来る。

これは、音楽と料理の分野の特徴。
つまり、言葉は要らない世界。
19=民宿に泊まる。
農家を改造したもの。

快適そうな部屋であった が・・・
20=この朝食は無いぜー!
バターはあるが、それを付けるパンが見当 たらない。

乾燥したラスクのような工場生産物に塗れってーのか!
呆れて笑いが停まらず、写真を撮らせてもらう。

オーナーが限りなくオ メデたいのがこれで判る。
まあ、たぶん宿自体が税金対策のためにやっているに違いない。

部屋の冷蔵庫にも何も入っていない。
空気だけが冷えていたので、「こ れは扉を開けて冷気を出すためなのだろう」とポジティブに考えた。

こ れがイタリアの面白いところ、怒ったら負けよ、この国は。
21=時間制限の無い「イタリア・スローツアー」なので前夜パンフで 見かけた中世の村に行って見ることにする。
これがもう完全なド田舎の閑散とした小さな村。
写真好きなお客さんと二人して撮りまくる。

壁マニアの僕としてはもう「ここに憧れの人が居たら・・・無視しますね」 というくらい充実していた。
次回は水彩のために戻って来ようと思う。
22=教会の壁。

裏庭に面して、瞑想するためか。
23=歴史をそのまま見せるのが心地よい、いさぎよい。

勝った負けた,いろいろありましたな人生
24=封印する過去、思い出してはいけないもの、いくつ持ってます?
25=日々乾いて行く、割れて行く、そこで営まれる暮らし。

「都会は石の墓場です」住むなら村だな、やはり。
26=小さなガレージ。
釣りの道具、鉢植えのハーブ。

「ああ,お婆 ちゃんのパスタが食べたい!」とミラノで暮らす次男が思い浮かべるのはこういう庭の一角。
27=無人なれど人の暖かみ有り。
28=小さな池に面した個人の庭。
門から撮らせてもらう。
食卓を準備する音が聞こえて来る。

親戚が集まって来るのかも知れない。
クルマが無いので怖いくらい無音、しかし光はふんだんに有り。
29=何と、村の中に盆栽の好きな人が居て、展示してある庭に入れてもらう。
オリーブの作品は気品さえある。
30=盆栽の後ろはイタリアの家と言う不思議な空間。
31=シルミオーネに帰って来ました。
何回来ても素敵な街。

まずはメ シだろう、常識として。
32=湖に面したロマンチックなレストランGにてオトコ二人が 昼からプロセッコ。
淡水イワシの唐揚げがウマい。

ここシルミオーネのレストランは 8軒ほど制覇したが、どこも悪くない。
というか、そういうところを選 んで行っているのかも。

ここ10年ほどこの街で僕とテーブルを挟んだたくさんの人たちを 思い浮かべながら白ワインを飲んで行く。
お客さん、友人、恋人・・・思い出が幻想となって行く、その境目あたりをほろ酔いで巡るのは実に楽しい。

旅に出ないとこういう心境にはなかなかなれないから、出かけましょ う、短い旅でも。
33=手打パスタ、キターラのイワシ和え。
素朴な味を上品に昇華させてある。

この店はなかなか。
34=岬突端の遺跡まで歩く。
騙し絵のある壁にホンモノの花の対比が 面白い。

陽射しはあくまでも強烈。
妥協しないところが救われる。
35=誰にも叱られないから伸び放題。

勝手にしてくれ状態。
36=ボローニャに戻りお客さんと最後の夕食。
ピザのウマい店を、と いう事でお薦めのMに行く。

ボンゴレを食べるのは僕。
日本では3人前はあろうかというのを、食べてしまえる自分が怖い。
37=オーナーに頼んで「特別ゴチャ盛り」ピザを焼いてもらう。
電気竃のくせに、ここのピザは抜群にうまい。

その代わり、薪の竃でないから「真正ナポリピザの店」には加盟できな いのだ。
しかし、生地はナポリ風だし、焼き方は最高だし、文句は言えないぜ。

ただ一つの欠点は・・・値段が安いという事かな?

一緒に来る?