あらすじ
文化文政時代、尾道に生まれた平田玉蘊。 幼い頃より、父新太郎の強い願望により絵筆をとった豊(玉蘊)は次第に絵師として頭角を現し始める。 と同時に、人々はその楚々とした美しさを、白牡丹や梔子の花に譬えるのだった。 だが、そんな豊の幸せも長くは続かなかった。 父新太郎が莫大な借財を遺して亡くなり、木綿問屋(福岡屋)の屋台骨、母や妹の庸まで、十九歳の豊が 絵筆一本で支えなければならなくなったのである。 そんな豊を励まし、応援してくれたのが、菅茶山、頼春風、尾道の豪商橋本竹下、慈仙上人などである。 ある日、豊は春風の招きで竹原を訪れる。そこで出会った頼山陽・・・・・・ まさか、山陽が運命の人となるとは思ってもいなかった豊・・・・・・。 傍若無人で偽悪ぶった山陽・・・・・・人の心を勝手に押し開いて入ってきたかと思えば、挨拶もなしに去っていく。 豊はそんな山陽に惹かれながらも戸惑いを隠せない。 果たして、このまま信じて付いていってもよいのだろうか・・・・・・。 だが、山陽は豊との約束を反故にし、京へと旅立ってしまう。母や妹と共に山陽の後を追った豊。 待っていたのは、優柔不断な山陽の煮え切らない態度であった。 失意の元、尾道に帰る豊・・・・・・。 耳を塞ぎたくなるほどの数々の醜聞に耐え、再び絵筆を持ったのはいいが、振り切ろうにもどうしても 振り切れない山陽への想い。 山陽に翻弄されながらも、愛し続けた平田玉蘊の生涯・・・・・・。 強くなければ生きてこられなかった・・・・・・。 山陽とのことも、苦い想いや、哀しい目にあいはしたけれども、万が一、この想い出を誰かが取り替えてくれと 言ったとしても、決して誰にも渡しはしない・・・・・・。 豊はそんな想いで、六十九歳の生涯を閉じるのである。 |