イタリア便り 8月号


今年の春から時間が取れなくて、今日までサボってしまいました。
久々に、4ヶ月分の映像を送ります。
長く、重いファイルですが、あえてそのまま受け取ってください。
これで約30分は、イタリアの風に吹かれる事が出来ます。
冷えたワイン片手にごゆっくり、どうぞ。


シチリア島連作。
ティンダリ。
坂道を登りきると東側に海が丸く展開した。
まだ春の来ない午後、そこだけ光が当たっている。
青い海の一角に白い砂州が模様を描いている。
引き潮の時にはそこに、キリストを抱いたマリアの形が現れると言う。
保護されたいと願う人々の解釈は世界共通だった。
控えめな、弱い風が吹いていた。
シチリアは優しい。
シチリア最後の夕食、片道140kmを走った山村にて。
イタリアベスト地方料理店10店の一軒に行く(現在までに6軒制覇!)。
久々の雨に苦労して着いた村では、あちこちに素敵な風景が待っていた。
食前酒を出す店の即売コーナー。
これから、昼間は体内に欲望を封印していた飲み助たちの時間が開く。
美しきかな、人生!
音楽愛好者の集まるサロン。
情熱的に音を愛する歴史を感じる。
半開きの扉を押して、「ちょっとブルース弾かせてください」と思わず入って行きそうになる。
店の中央に置かれた魚雷のような子豚の丸焼き。
かなりウマそう。
これで赤ワインだろう。
うーん、あなたも、魚雷にて撃沈したい願望・・・?。
シルミオーネ連作
3月の最終週、夏時間の到来をシルミオーネで迎える。
1時間を太陽に預ける事への見返りプレゼントとして、おいしいものを少しづつ食べながら、
結局一度も雪の降らなかった冬の終焉を白ワインで祝う。
湖の魚に柿のソース、はんなりとした上品な味。
淡水魚はシャイな種族なのかも?
地元のハム盛り合せにタマネギジャム。
来ましたねー、やはり肉の文化親交団が。
発泡白ワイン大使を差し向けて、しっかり歓待してあげました。
デザート7種類。
食べきれなくてもオーダーしてしまった。
ナーニ、人生にいくつもある、「許される暴挙」のひとつだ、気にしない!。
それよりは「あのときのデザート、頼まなかった悔恨」の方がトラウマとして残るぜ。
ADTK症候群だ。
この保養地にはオペラ歌手マリア・カラスが1950年代に夫と過ごした家がある。
ギリシャの海運王、オナシスとの恋愛はいつごろだったか?
夫婦平穏であったろうか、この家では・・・。
ナーンて心配してしまう、「国際結婚被害者同盟」の私です。
アルプス、アヤ谷トレッキング連作。
友人が数年前に亡くなった母の遺骨を撒いた湖へ久々に行くことに、
昨夜の夕食で決まって、日帰りの一日。

クルマから降りてヤマを見る。
崩れそうな空だったが、やはり行く事に決めた。
それは片道400kmかけて、ここまで来た自分を裏切れなかったから。
対面の谷が美しい。
そこはまだ冬世界。
針葉樹の細く尖った枝が、自分の胸に突き刺さるように感じて、ほとんど泣きそうになる。
「失恋時、得恋時に人間の感性は最大限に敏感になる・・・」とは
「世界恋愛感情精神学会」のシンポジウムでも発表された定説です。
森林限界線近く、やがて路は開けた平原に出る。
奥には氷河を抱いたモンテローザ山群が無言で待つ。
ほとんど無人の一面の雪原を横切って行く。
でも・・・、膝までの雪が深くて、何度も「諦めようか・・・」と思う辛さ。
今日の目的地、「青い湖」に到着。
氷河からの水に含まれている沢山の雲母が、空の色を映すことで、登山者に息をのませる深い青を生み出している。
それは、夏の谷に堕ちてきた一片の空のような小さな湖だが、今日は一面凍り付いていて、水面はわずか。
ハムパンの昼食後、かつて、この湖の脇に亡き母の骨を撒いた友人は、ジャケットを羽織りながら
「オレ、これから対岸まで行って来るよ、もし怒鳴り声が聞こえたら、
オフクロと喧嘩してると思ってくれ」と、彼しか知らないその場所まで歩いて行った。
下界で日々働く彼に取って、実に3年ぶりの「墓参り」である。
僕は、大事な友人だからこそ現場まで同行せず、あえて一人で行かせてから、
変わりやすい天気の陽射しのもと、大きな岩の上で昼寝をした。
友人が雪を踏む足音が遠ざかって行き、やがて、消えた。
怖いほどの静寂。
前日「花を一束、持って行こうか?」と聞いたら「間もなく当たり一面花が咲く、
それ以上、美しい景色は無いから切り花なんかいらないぜ」
と言われたが、確かにここには天国が広がっていた。
白一色が支配する無音の世界。
戻ってきた友人に「この谷には俺たち二人だけだ」と言ったら
「いや、オフクロも入れて3人だ」と一本取られた。
そう・・・そうなのだ、都会暮らしでその事を忘れていたよ。
片道400km往復を日帰りでするために、
あの下の平原から、雪に苦労しながら昇って来た2人のアホが居た。
そういう酔狂な日曜日があっても、全然問題ない。
僕らは疲れた下半身に、解放されたココロが乗っているアホとして下界に降りて行くのだ。
何か文句あるか?
何十回目かのトスカーナ小旅行。
サン・ジミニャーノ
一番好きな一角。
ドアが導くのは空間だけでなく、時間もある、と言う事が判る。
ドラエモンの「どこでもドア」を写真にすると、こうなります?
モンテリッジョーニ連作。
時が封印された王冠の街。
500年前に遡って、「人生やり直しツアー」参加します?
希望者多数にて抽選ですが。
壁の材料が各種混ざって、数百年の時間が凝縮している。
壁評論家の第一号になろうかしら。
右の枠内は完成度が低い、というか、コンセプトが間違っている。
やり直してほしい。
壁も凄いが扉も凄い。扉評論家も兼業だ。
意味不明の小窓群。
さすがの私にも判りませんな、アナタの意見は?
各種の鉢植え勢揃い。どうせなら名札も付けてくれ!
ピエンツァ連作
壁はゴツゴツなのに、見る者の心を滑らかにする。
自転車に乗ったとたん、口笛が出るに違いない。
こちらはカーデザインの名門、ピニンファリーナの自転車。
隙間をひたすら嵌め込んで行く執念。
見ていて胸が熱くなってくる。
塗りなぐった壁の美しさ、庶民芸術の極地?。
マンホールの蓋。これだけ盗んで壁に飾りたいくらい。
モンティッキエッロ連作
思索中のネコ。
「我が輩は本当に猫だろうか?」と考えている?
縛られたサボテン、でも俺は勝手に伸びて行くぜ!
何時来ても手入れされている一角。
その住人に会ったことは無いけれど。
壁の歴史。
埋めなくてはいけなかった事情を想像する事が創造です。
公衆トイレへの道。誰も居ない静かな空間。
溜まってないのに、オシッコしたくなったので降りて行く。
ピエンツァ北方の丘。
映画「イングリッシュ・ページェント」のロケに使われた教会。
泊まれます。
アペニン山脈の肉専門店連作。
これは一番小さいのをお願いして焼いてもらった500g。
すんません、小さくて。
絶妙なティラミスー。
肉の後にこれだからね・・・でもADTK症
候群トラウマが怖いので、頼む事にする。
洗い場への食器の下げ台。絶対に絵になる一角。
この店は大型トラック長距離ドライバーの溜まり場です。
ついに捉えた決定的一枚、仕事中にワインを飲むお巡りさん。
そのまま運転して職場に戻ります。
観光用ビデオのアフレコの仕事。
録音開始前に「そこで好きなもの飲んで待機していてよ」と言われる。
各種の酒が揃っているコーナーは、これから仕事!というよりは仕事帰りの一杯の雰囲気。
喉のためにグラッパを一杯。
で、実際の朗読も、ミニスカートのオネエちゃんが机に腰掛けているというドキドキする環境。
あまりに面白いので写真を撮らせてもらう。

vol.2へつづく

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